日本言語技術教育学会blog

言語技術教育の創造を目指しています。

日本言語技術教育学会第34回研究大会・秋田大会の成果と課題の想定

 日本言語技術教育学会第34回研究大会・秋田大会の研究論文集である『言語技術教育34』を書き続けている。

 令和6年最後の論文として,以下を書いた。巻頭論文である。

 今年も公務,研究発表,論文執筆,著書執筆,大会運営,eラーニング教材の開発など多忙を楽しんだ。特に,中学校と大学の兼務は勉強になった。

 明日からも,論文執筆に専念しよう。8日から授業が始まる。楽しみである。

 去年今年思考続けて研究す 直明

 

 日本言語技術教育学会第三四回研究大会・秋田大会の成果と課題の想定 会長 柳谷直明

 本学会の年次研究大会での次の研究方法は本学会の研究成果の一つである。指導者が用いた言語技術、学習者に身に付けさせた言語技術を授業者が模擬授業で明示する(言語技術が見える状態)。その後、模擬授業者、指定討論者、参加者が議論して、模擬授業で明示された言語技術を検討する。(言語技術の有効性による厳選)

 実践を想定した、言語技術を使用した模擬授業での報告と議論での検討という研究方法は具体的である。しかし、事前検討は難しい。したがって、模擬授業での言語技術を推測したり、各領域で有効な言語技術を判断したりして、『言語技術教育34』で提案し合っている。研究大会の構成は学習指導要領国語科の領域と同様にしている。

 田邉泰は「話すこと・聞くこと」領域にて、「質問について考える」という自作教材で附属小六年生との授業を公開する。(学習者の参加を附属小で募るので、何名集まるかは分からない。教材も不明である。)質問が用いられる言語活動場面での言語技術が報告される。質問での話し方、メモの仕方、回答内容の活用などでの言語技術が想定される。

 岩下修は「書くこと」領域にて、「「学校ですきな場所」を四段落構成でまとめる」という自作教材で附属小四年生との授業を公開する。どのような文種(文章の種類)で、その文種の記述に必要な言語技術が問われる。柳谷の作文指導は学習者に端末で書かせている。手書きとタイピングの記述方法も作文指導の可能性として検討する必要がある。

 冨樫忠浩は「読むこと」領域にて、「『君は「最後の晩餐」を知っているか』(光村図書中二)で附属小六年生との授業を公開する。中学二年生のeラーニング教材で「鑑賞・批評」を指導する。授業者は冨樫だが、柳谷との共同研究である。当日はスライドを使って冨樫が授業する。このようなeラーニング教材の可能性も議論する必要がある。

 京野真樹は「読むこと」領域にて、「『ぼくのブック・ウーマン』(光村図書小六)で附属小六年生との授業を公開する。「書き足し・書き替え物語で読み深めよう」を展開する。文学の読みに有効な言語技術が問われる。その方法として、書き足し、書き換えが用いられる。「作文ジャンルの変換」の有効性、リライトとの異同なども議論しよう。

 学年、領域に有効な言語技術が報告され、検討される。参加者は質問や意見を一分間で述べる機会が与えられる。全参加者が言語技術の使用を意識して端的に発言し、言語技術教育の体現者として成長できる大会としよう。

 

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日本言語技術教育学会第34回研究大会・秋田大附属小大会

 日本言語技術教育学会第34回研究大会・秋田大附属小大会の御案内です。

 秋田大学教育文化学部附属小学校に御協力いただき,附属小学校児童との授業を公開します。

 言語技術教育,不登校児童・生徒への学習保障,教員の業務縮減の可能性を持つeラーニング教材の開発などを提案します。

 ともに日本の教育を改革しましょう。お待ちしています。

 

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 日本言語技術教育学会第33回研究大会群馬大会

 日本言語技術教育学会第33回研究大会群馬大会を令和6(2024)年6月29日に群馬育英大学で開催します。楽しみです。

 今大会では,鑑賞対話指導,テキスト生成AIを用いた作文指導,説明文指導,詩歌指導の模擬授業を通して,それぞれの領域で扱う言語技術を検討します。

 言語技術には,いくつかの階層がありますが,我々が主に検討しているのは,学習者が使用する言語技術と指導者が使用する言語技術です。

 学習者が使用する言語技術もいくつかの階層がありますが,学習者が言葉で表す言語技術の一部を学習用語と呼んでいます。言語で表せない言語技術もあります。例えば,その相応しい配慮などです。

 指導者が使用する言語技術は指導技術とそれ以外になります。指導技術以外の言語術としては,人間性を表す巧みな言葉遣いなどが含まれるでしょう。これはかなり指導者の個性的なものです。ただし,教室雰囲気は学習効果を高める大きな要因ですから,最も重要です。そのような安定した雰囲気の上にて,指導技術が効果を発揮します。

 このように,言語技術とそれ以外の多くの要素がスパイラル的に関連し合い,学習者が満足するよい授業が成立するのです。このような前提の上で,特に言語技術を抽出して検討しているのが本学会です。言語技術の向上だけが,効果的な授業を成立させる要因ではありませんが,言語技術が高まるとより授業が,生活が,人生が充実します。

 

 若い皆さんも,自らの言語技術を向上させたり,学習者の言語技術を向上させたりして,言語活動の充実やより充実した個別最適な協同的な学びを成立させたりしませんか。言語技術の向上は多くの活動を高め,思考を深めます。

 群馬,育英短期大学でお待ちしています。

 

 お申込みはこくちーずからです。

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 『言語技術教育33』公刊!

 『言語技術教育33』が公刊されました。2023年12月から編集し,3か月で完成しました。柳谷が編集しています。溪水社のお蔭様です。大変有難うございます。

 

 日本言語技術教育学会第33回研究大会群馬大会への参加者へは,当日配付します。

 事前に学習されたい方,大会へは出席されない方は御購入ください。

 

 33号に加え,32号31号も好評発売中です。

 言語技術を駆使した教員を目指しましょう。研究大会への御出席,日本言語技術教育学会への御参加,御購入をお待ちしています。

 

 

 

言語技術教育の改善に取り組む:日本国民の国語学力向上を目指して

 日本言語技術教育学会第33回研究大会群馬大会研究論文集『言語技術教育33』の巻頭論文を公開します。

 『言語技術教育33』は溪水社から間もなく公刊いただきます。Amazonで販売されます。大会参加者へは大会当日配付します。大会へ参加できない方,事前に学習したい方はAmazonで購入できます。是非,御覧ください。

 巻頭論文を書きましたので,御批評ください。国語科教育の改善に取り組み,日本国民の国語学力向上に貢献していきましょう。

 

 日本言語技術教育学会第三三回研究大会・群馬大会の成果と課題の想定 会長 柳谷直明

 本稿は日本言語技術教育学会第三三回研究大会・群馬大会の成果と課題の想定である。

 『言語技術教育33』は大会での模擬授業指導案、研究論文を収載した。加えて、『宇佐美寬氏追悼の辞』も収載した。宇佐美(論文の敬称は省略する。)は本学会の発起人の一人であり、功績が大きいと会長が判断したからである。過去、元会長の市毛勝雄を大内善一が追悼した。会員が逝去する度に追悼を収載しなくては不平等であると宇佐美は批判するだろう。今回は会長判断で『宇佐美寬氏追悼の辞』執筆希望者を募った。その結果、会長と前会長と常任理事三名が執筆した。今後、追悼の収載は理事会で決めればよい。追悼文収載の判断基準はない。このような理由から、『言語技術教育33』は『宇佐美寬氏追悼の辞』を収載した。『宇佐美寬氏追悼の辞』は宇佐美の個体史研究でもある。

 日本言語技術教育学会研究大会は指導者の言語技術と学習者に身に付けさせる言語技術を模擬授業で報告し合い、模擬授業者、指定討論者、参加者の議論で検討する。模擬授業での報告、報告された言語技術の有効性の議論による検討という研究方法は本学会の研究成果の一つといえよう。しかし、実践を想定した、言語技術が見える模擬授業の報告と議論による検討、これらの研究方法は具体的であるが、事前検討が難しい。したがって、『言語技術教育33』の執筆者は研究大会での模擬授業で想定する言語技術、研究開発して必須と想定する言語技術を報告し合う。

 第三三回研究大会の構成は学習指導要領国語科の領域と同様である。京野真樹は「話すこと・聞くこと」領域にて、「対話による絵画の鑑賞」に有効な言語技術を報告する。「鑑賞」は国語科に加え、図画工作、音楽、美術でも必須な語彙であり、言語活動である。しかし、「鑑賞」を通して、教科内容を深く学んでいる学習者は少ないだろう。各教科等での言語活動が充実してないからである。したがって、言語活動の充実のための言語技術指導が課題である。

 山本裕貴は模擬授業でChatGPTの作文指導に有効な言語技術を報告するだろう。テキスト生成AIを用いた指導に加え、手書き指導が課題である。柳谷(二〇二二:八四)は述べる。「GIGAスクール構想が推進されている現在、筆者は原稿用紙を用いず、PCでレポートを書かせている。今後、PCでの作文指導は増えるだろう。」柳谷は三年前から再任用で担当している中学生に原稿用紙を使った作文指導をあまり行っていない。メモや下書きはタイピング、清書は手書きさせている。例えば、指導者は手書きしているだろうか。宇佐美の論文は手書きであった。野口芳宏も手書きである。柳谷は両者の手書き論文のタイピングの経験を持つ。池田(二〇一一:一一)は述べる。「視写がよい。読み書きの経験を積ませるために、継続的で大量の視写を課す。」「私の視写の授業では、手書きのみをさせる。「日本語表現」で課す作文も手書きである。たまに作文をコンピューターで「作成」してくる学生がいるが、それは受理しない。必ず手書き原稿を提出させる。」(同、一六八)確かに、視写、手書きは様々な価値を持つ。しかし四〇年間、柳谷はタイピングである。毎年二〇〇枚前後を発行していた学級通信は手書きであった。それも、一九九七年以降はタイピングにした。したがって、柳谷は二五年くらい長文を手書きで書いていない。タイピングのためか、池田(二〇一一)も述べているように学習者の字形は崩れている。小学一年生から一人一台端末が貸与されている現在、更に崩れていくだろう。柳谷は三年間、中学生の手書き文字を見ている。「か」「せ」「や」などで判別できない文字を生徒は書く。令和五年度は中学三学年全員の国語を担当していた。平仮名の字形が崩れていたので、タイピングだけだと更に手書き文字が崩れる危険性がある。そこで、ノート指導と点検、原稿用紙の清書指導と点検、定期テストの記述式問題(各学年一〇問程度)の解答の点検を行い、字形指導をしていた。テキスト生成AIに関連する課題は多い。

 瀧沢葉子は説明文を読解させる授業に有効な言語技術を報告する。例えば、どう情報を理解させるか、どう情報を操作させるか、どう活用させるか、どう語彙を増やすか、どう考えを形成させるか。説明文の読解指導は指導目標により、多様な学習活動、言語技術が想定できる。したがって、説明的文章の指導目標ごとの言語技術が課題である。

 岩下修は詩歌の読解・鑑賞に有効な言語技術を報告する。『詩の授業』で読解・鑑賞を深める言語技術をどう必然的に、スムーズに指導するか。国語科授業で学習者が身に付けるのは、言語技術に加え、言語技術を含む語彙、学習意欲でもある。学習意欲を喚起する、学習者を国語好きにするための指導者の言語技術も課題である。報告を期待する。

 

参考文献

池田久美子(二〇一一)『視写の教育――〈からだ〉に読み書きさせる』東信堂

柳谷直明(二〇二二)「各教科等の言語活動を充実させるための言語技術抽出法研究」言語技術教育学会編『言語技術教育31』溪水社、販売はamazon

 

 

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20240629

 

 

『言語技術教育33』目次公開 3月刊行予定!

 日本言語技術教育学会第33回研究大会・群馬大会の研究論文集である『言語技術教育33』の目次が完成した。貴重な論考を収載できた。執筆者各位に感謝する。

 3月にAmazonで販売する予定である。研究大会参加者には,無料で配付する。

 大会申込みはこくちーずから。

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言語技術教育33/ 目次

 

日本言語技術教育学会第三三回研究大会・群馬大会の成果と課題の想定  柳谷直明   ⅰ

 

一 特集 私が主張する「言語技術教育論」

 

◆ 言語技術教育解明試論二 ――宇佐美寬論文の検討を例として―― 柳谷直明    三

◆ 〈学習の手引き〉で言語技術を可視化する―大村はまの「てびき」を手がかりに―    大内善一    八

◆ 言語技術教育を支える人間としての在り方         野口芳宏   一三

◆ 言語技術教育と国語教科書              中村孝一   一八

◆ 「学習規律」の一部は言語技術である          渥美清孝   二三

◆ 「事実」と「考え」を区別して表現できるようにする授業の提案 今井 東   二八

◆ 論文の形式を重視した論理的文章の読み方指導(中学校) 長谷川祥子  三三

 

二 授業一 「話すこと・聞くこと」領域での言語技術指導

 

教材名『子供学芸員になろう〜対話による絵画の鑑賞を通して〜』(小四、自作教材)

◆ 国語科学習指導案『子供学芸員になろう〜対話による絵画の鑑賞を通して〜』      京野真樹    四〇

◆ 対話による鑑賞の内容を即座に再構成して解説する醍醐味を味わう  同     四四

◆ 提案授業に期待したいこと             開田晃央   四六

◆ ことばの引き出しを「開ける」・「増やす」手立て    中村麻里那  四八

◆ 教科内容に関わる指導の充実を            渥美清孝   五〇

◆ 「話すこと・聞くこと」の学習の基本はスピーチと話し合い(討論) 長谷川祥子  五二

◆ 否定、修正、変容のある授業を期待する        野口芳宏   五四

◆ 相手を尊重する心が起点となる            岩﨑 淳   五六

◆ 根拠を基に理由を明確にする「引用」の技術      大渕康孝   五八

◆ 基礎的な言語技術を繰り返し指導する         田邉 泰   六〇

◆ 扱う作品は学習者に選ばせればよい          大貫眞弘   六二     

◆  対話を通して、考えを深化・形成させる         冨樫いずみ  六四

◆ 「探究マップ」で論文発表をする――「思考」から「表現」(話すこと)へ――      池田尚子    六六

◆ 作品鑑賞を話材とした具体的指導事項と伝達内容理解のポイントは何か         三浦 弘   六八

◆ 対話を核にした創造的な鑑賞学習――若冲動植綵絵」の解釈・考察を通して――    左近妙子   七〇

 

三 授業二 「書くこと」領域での言語技術指導

 

教材名『ミニ芥川賞作家になろう』――テキスト生成AI(ChatGPT)の選択を通して――(小六、自作教材)

◆ 国語科学習指導案『ミニ芥川賞作家になろう』――テキスト生成AI(ChatGPT)の選択を通して―― 山本裕貴   七四

◆ AI時代を生きる子供たちへの作文指導の在り方                    同       七八

◆ 言語技術教育にとって文章生成AIは有効か       大内善一   八〇

◆ 「書く」技術を提示して、指導・評価する責任を果たす  西山明人   八二

◆ テキスト生成AIはどのような言語技術を見出すのか   安  暁彦   八四

◆  小学六年生にChatGPTを用いて指導する意義は何か 國府田祐子  八六

◆ 文種の見出し語の理解、使用(選択、具体化による詳述)が言語技術である       柳谷直明   八八

◆ 書く「材料」を自分で集めるのは大変である       上原秀一   九〇

◆ 生成AⅠを活用して物語を「書くこと」の目的と意図   篠原京子   九二

◆ 言語活動と生成AI                  井上善弘   九四

◆ 芥川賞(純文学)的作品を書く言語技術――BingとBardの活用比較――          塚田直樹   九六

◆ 生成AIを活用する際の留意点               渡辺真由美  九八

◆ 子どもの作品の「評価」の問題をどう明確にするか      井上敬夫  一〇〇

◆ 言語技術の習得に向けた「言語活動」の工夫       坂本 要  一〇二

◆ 試行錯誤……トライ&エラーで創作する              川又智子  一〇四

 

四 授業三 「読むこと」(説明的文章)領域での言語技術指導

 

教材名 『固有種が教えてくれること』(小五、光村)   

◆ 図表等がある論理的文章を読む学習~小学五年生国語科学習指導案~          瀧沢葉子  一〇八

◆ 図表等がある論理的文章を読む学習――文章と図表等を関連づけて読む言語技術――    同     一一二

◆ 言語活動は言語技術で上達させる――言語技術を観点にして批評させる――       冨樫忠浩   一一四

◆ 言い換えと比較に着目して読む――「言語技術Ⅰ」の検討を通して――         髙木輝夫   一一六

◆ 文章内容理解のための基本的な言語技術        山中伸之  一一八

◆ 「文章と図表を照応させて」読み解く         照井孝司  一二〇

◆ 他教科の学習活動を支える言語技術を身に付ける    髙橋秀一  一二二

◆ 論理的文章の特質を理解させる            大木真智子 一二四

◆ 図や表を用いた文章読解               藤原かおり 一二六

◆  論理的文章を、図・表・グラフ等の資料と関連させて読む 西山悦子  一二八

 

五 授業四 「読むこと」(文学的文章)領域での言語技術指導

 

教材名 谷川俊太郎『うんとこしょ』(小三)

◆ 野口流小出し方式による詩の授業~小学三年生国語科学習指導案~           岩下 修   一三二

◆  野口流小出し方式による詩の指導法の継承と発展を                   同    一三六

◆ 詩を読むことから創ることへの「橋渡し」となる教材  今井 東  一三八

◆ 素材研究から発問作りへ                      松澤正仁  一四〇

◆ 「うんとこしょ」と「どっこいしょ」―言葉の実態を糸口に―             河内昭浩  一四二

◆ 谷川俊太郎の詩に魅了されて―生きることと言葉の関係をとらえ直す―         佐藤洋一  一四四

◆ 詩「うんとこしょ」の群読指導            神部秀一  一四六

◆ 詩の楽しみ方を教える言語技術            増田 泉  一四八

◆ 「どのように音読するか」を考えるための言語技術指導 斉藤美智子 一五〇

◆ 詩が伝えるメッセージを発見・創造する読みを楽しむ学習指導を期待する        平河 力  一五二

◆  詩に対する積極的な見方を育てる指導         小川智勢子 一五四

◆  「小出し方式」で言語技術指導――楽しみながら――  伊藤孝之  一五六

◆ 韻律とイメージを読み味わう詩の学習指導――どう「読む」かを考える――       小泉尚子  一五八

◆  文学的文章の学びは実用性に根拠を求めるべき     佐野一機  一六〇

◆ 野口芳宏氏の小出し方式による詩の授業法――『うとてとこ』の応用を探る――     櫻井智雄  一六二

 

六 宇佐美寬氏追悼の辞

◆ 教育界の至宝                    柳谷直明  一六六                                                                        

◆ 追悼・宇佐美寛先生―宇佐美寛先生と言語技術教育―  大内善一  一六八                                                                        

◆ 巨星落つ寂寥敬慕眠る山  糸朗           野口芳宏  一七〇                                                                        

 

七 第32回研究大会(静岡・ハイブリッド大会)の報告       渥美清孝   一七三

編集後記                                      柳谷直明  一七七

 

 

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日本言語技術教育学会第33回研究大会群馬大会 募集開始

 日本言語技術教育学会第33回研究大会群馬大会を令和6(2024)年6月29日に育英短期大学で開催する。

 大会研究論文集である『言語技術教育33』を刊行した。

https://amzn.asia/d/1yM7p4v

 

 序文を公開する。研究者と実践者が平等に議論し合う稀有な研究会である。是非,多くの方と学び合いたい。申込みはこくちーずである。参加をお待ちしている。

 

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 『言語技術教育33』序文

 

 日本言語技術教育学会第三三回研究大会・群馬大会の成果と課題の想定 会長 柳谷直明

 日本言語技術教育学会第三三回研究大会・群馬大会の成果と課題を想定する。

 『言語技術教育33』は大会での研究論文、模擬授業指導案を収載し、加えて、『宇佐美寬氏追悼の辞』も収載した。宇佐美寬(論文での敬称は省略)は本学会の発起人の一人であり、功績が大きいと会長が判断したからである。過去、市毛勝雄の追悼を大内善一が収載した。会員の追悼を収載するならば、会員が逝去する度に収載しないと不公平であると宇佐美は述べるだろう。今回は会長判断で『宇佐美寬氏追悼の辞』執筆希望者を募りその結果、会長と前会長と常任理事三名が執筆した。今後、追悼収載は理事会で決めればよい。追悼収載の判断基準はない。このような経緯で『言語技術教育33』は『宇佐美寬氏追悼の辞』を収載した。『宇佐美寬氏追悼の辞』は宇佐美の個体史研究ともなる。

 日本言語技術教育学会研究大会は指導者の言語技術と学習者に身に付けさせる言語技術を模擬授業で報告し合い、模擬授業者、指定討論者、参加者の議論で検討する。模擬授業での報告、報告された言語技術の有効性の議論による検討という研究方法は本学会の研究成果の一つといえよう。しかし、実践を想定した、言語技術を使用した模擬授業の報告と議論による検討、これらの研究方法は具体的である。しかし、事前検討が難しい。したがって、『言語技術教育33』の執筆者は研究大会の模擬授業での言語技術の推測や、各領域で必須と判断する言語技術を報告し合っている。

 第三三回研究大会の構成は学習指導要領国語科の領域と同様である。京野真樹は「話すこと・聞くこと」領域にて、「対話による絵画の鑑賞」に有効な言語技術を報告する。「鑑賞」は国語科に加え、図画工作、音楽、美術でも必須の語彙であり、言語活動である。しかし、「鑑賞」を通して、教科内容を深く学んでいる学習者は少ないだろう。各教科等での言語活動が充実していないからである。したがって、言語活動充実のための言語技術指導の解決が課題である。

 山本裕貴は模擬授業でChatGPTの作文指導に有効な言語技術を報告する。テキスト生成AIを用いた指導に加え、手書き指導が課題である。柳谷(二〇二二:八四)は述べる。「GIGAスクール構想が推進されている現在、筆者は原稿用紙を用いず、PCでレポートを書かせている。今後、PCでの作文指導は増えるだろう。」三年前から再任用で担当している中学生に柳谷は原稿用紙を使った作文指導をあまり行っていない。メモや下書きをタイピング、清書を手書きさせている。例えば、指導者は手書きしているだろうか。宇佐美の論文は手書きであった。野口芳宏も手書きである。柳谷は両者の手書き論文をタイピングした経験を持つ。池田(二〇一一:一一)は述べる。「視写がよい。読み書きの経験を積ませるために、継続的で大量の視写を課す。」「私の視写の授業では、手書きのみをさせる。「日本語表現」で課す作文も手書きである。たまに作文をコンピューターで「作成」してくる学生がいるが、それは受理しない。必ず手書き原稿を提出させる。」(同、一六八)確かに、視写、手書きは様々な価値を持つ。しかし、四〇年間、柳谷はタイピングしてきた。毎年二〇〇枚程度を発行していた学級通信は手書きであった。それも、一九九七年以降はタイピングにした。したがって、柳谷は二五年間くらい手書きで長文を書いていない。池田(二〇一一)も述べているが、タイピングのためか学習者の字形は崩れている。小学一年生から一人一台端末が貸与されている現在、更に崩れているだろう。柳谷は三年間、中学生の手書き文字を見ているが、「か」「せ」「や」など判別できない文字を生徒は書く。令和五年度は中学三学年全員の国語を担当した。平仮名の字形が崩れていた。タイピングだけだと更に手書き文字が崩れる危険性がある。そこで、ノート指導と点検、原稿用紙の清書指導と点検、定期テストの記述式問題(各学年一〇問程度)の解答の点検を行い、字形指導もしていた。テキスト生成AIの作文指導に関連する課題は多い。

 瀧沢葉子は説明文の読解指導に有効な言語技術を報告する。例えば、どう情報を理解させるか、どう情報を操作・活用させるか、どう構成を活用させるか、どう語彙を増やすか、どう考えを形成させるか。説明文の読解指導は指導目標により、多様な学習活動、言語技術を想定できる。したがって、指導目標ごとの言語技術の解明が課題である。

 岩下修は詩歌の読解・鑑賞指導に有効な言語技術を報告する。『詩の授業』で読解・鑑賞を深める言語技術を必然的、スムーズにどう指導するか。国語科授業で学習者が身に付けるのは、言語技術に加え、言語技術を含む語彙、学習意欲もある。学習意欲を喚起する、学習者を国語好きにするための指導者の言語技術の解明も課題である。期待しよう。

 

参考文献

池田久美子(二〇一一)『視写の教育――〈からだ〉に読み書きさせる』東信堂

柳谷直明(二〇二二)「各教科等の言語活動を充実させるための言語技術抽出法研究」言語技術教育学会編『言語技術教育31』溪水社、販売はamazon.

 

20240629